2015/09/30 第116回 - 山田 桂 博士

 第116回の懇談会は、信州大学理学部の山田 桂 博士の話題提供で行うことになりました。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。


第116回汽水域懇談会

題目 :貝形虫群集を用いた過去1700年の中海の古環境変遷
話題提供者 : 山田 桂 博士(信州大学理学部准教授)
日時 : 2015年9月30日(水)17:00~18:00
場所 : 島根大学汽水域研究センター2階セミナー室(201号室)


【発表の概要】
日本列島周辺における過去2,000年間の古環境変遷は十分明らかにされたとは言えない. そこで本研究では,過去1,700年間を対象に古環境変遷を明らかにするため,中海湖心部の貝形虫群集の変化を検討した.139試料から20属34種の貝形虫が産出した.Qモードクラスター分析によって明らかになった4つの貝形虫相(BST, BSC, SC and B)とその時間的変化は,以下の環境変遷を示した.300~1,100ADには塩分25~30 psu,水深5~10 mの内湾が存在した.1,100 AD以降は塩分20~30 psuの汽水湖になった.1,800~1,900ADは外洋水の流入量が増加したことが示唆された.過去100年間は湖心の底層は急速に貧酸素環境になり,ごくわずかな貝形虫種しか生息できないようになった.本研究の貝形虫群集と古文書記録から,「夜見島」は300 AD以前に形成され,1,100 AD頃に見られなくなったと考えられる.この内湾から汽水湖への変化と中国および日本の気温や降水量変動の時期は一致しないことから,1,100 ADの環境変化は砂州の発達などの地域的古地理の変化によって引き起こされたと考えられる.

掲示用ポスター