2017/12/06 第130回 - 山田 勝雅 博士

 第130回の懇談会は山田 勝雅 博士(熊本大学 くまもと水循環・減災研究教育センター 特任助教)の話題提供で行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。


第130回汽水域懇談会

題目 : 汽水域の漁獲ベントスの時空間動態からメタ個体群動態を推定する
話題提供者 : 山田 勝雅 博士(熊本大学 くまもと水循環・減災研究教育センター 特任助教)
日時 : 2017年12月06日(水)17:30~18:30
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 エスチュアリー研究センター 2階セミナー室(201号室)


【発表の概要】
 沿岸浅場域の干拓事業や都市化に伴う人為的な生息環境改変下において生残する種の多くは,幅広い環境適応能力や高い繁殖能力を有しているものの,局所個体群の消失が頻繁に生じているだろう.そのような状況下で絶滅を回避する種はどのようにして種個体群を維持させているのだろうか.
 汽水域の漁獲ベントスの多くの種が発生初期に浮遊幼生期を有することで広範囲に移動分散できる能力は,種の絶滅リスクを分散させる生存戦略のひとつとして挙げられる.分断化された局所個体群間の移動分散という空間プロセス,すなわちメタ個体群の存続性は,種個体群の維持に重要な役割を担っていると考えられる.
 しかし,分断化した局所個体群の空間分布動態(空間配置)の把握や,各局所個体群のメタ個体群としての役割(ソース・シンク)とその緩い繋がり(Connectivity) を実証的に解明することは困難であり,例えば,野外調査等によって得られたデータがメタ個体群の概念に当てはまらないといった報告例も多い.
 本懇談会では,メタ個体群を形成するモデル種として,水産有用種のひとつであるアサリと,アサリをマット被覆によって死滅させるホトトギスガイを取り上げ,中海での野外調査,野外実験,モデル解析によって得られた結果から(e.g., Yamada et al. 2014, Miyamoto et al. 2017),メタ個体群動態の実体解明を目指す研究を紹介する.沿岸域の干拓事業や都市化によって生じた劣悪な環境下においても,また,ホトトギスガイや海藻の被覆によってアサリ個体群が著しく減耗されながらも,繁殖個体群を維持し続ける(絶滅回避)その個体群維持機構にメタ個体群形成の観点から迫りたい.


掲示用ポスター