南極沿岸湖沼調査を終えて(2)-香月 興太 博士-

2018年4月23日

<img title="180413TOP.jpg" src="/_files/00265966/180413TOP.jpg" alt="180413TOP.jpg" />南極沿岸湖沼調査を終えて(1)

~南極の天気・気温~
 
文責:香月 興太
島根大学エスチュアリー研究センター
第59次南極地域観測隊夏・先遣隊 隊員
 
 南極と一言でいっても広大で、場所や時期により環境は様々です。夏隊として南極に行くことになったとき、私の調査地をよく知る先人の方々から「大して寒くないよ」とよく言われました。その時思ったのは、「まあ大して寒くないと言っても、そこはやっぱり南極、やっぱり寒いんだろう」ということです。そして、防寒具を結構買い込みました。そして結局、着なかった防寒着が結構でました。将来私と同じように南極沿岸部の露岩域に夏に行くことなったら、思い出してください。「大して寒くないよ」。そして薄手の服も忘れずに準備することを強くお勧めします。南極沿岸露岩域の12月は松江の12月より暖かいです。
 という訳で、今回は南極の気温の話をしたいと思います。私は今回先遣隊として、11月3日に昭和基地に入りました。到着時の気温は‐20度。厚着をしていても寒く、「こんな環境で、野外に100日以上いて調査するのか」と戦慄した記憶があります。
 

写真4.到着直後。隊から貸与された防寒着をきて南極の日の入りを撮影する隊員たち。
 
 結論からいえば、この日が冬の最後の日で、翌日気温は-3度ほどになりました。そして隊のみんなの防寒着は一気に薄くなりました。ちなみに私、経験者の「薄手で十分」という忠告を聞かず(だって‐3度って結構寒く聞こえるでしょ)、4日の野外訓練に到着時に来ていた厚手の防寒着を着て参加したのですが、メッチャ汗かきました。そしてこの厚手の防寒着は荷物の奥深くしまわれ、帰りの飛行機に乗るときまで取り出されることはなくなりました。実は南極は湿度がすごく低いので、日本の同じ気温と比べるとかなり暖かく感じるのです。体感だと日本の同じ気温に比べて、5度程度は暖かく感じるのではないか思います。気温は11月の後半にはプラスになり、12月の間は1度から8度ぐらいの間を推移する感じです。これだけ暖かいと、雪ではなく雨が降ることがあって、「南極って雨が降るんだ」と驚かされました。
 

写真5.海底堆積物調査に向かう途中の柴田隊員と菅沼隊員。見ての通り薄着。これでも汗をかく。
 
 南極の調査で知ったのは、防寒着には適切な枚数があり、適切な枚数を超えて厚着をすると、逆に寒くなるということです。汗をかくので、体温をどんどん奪われるわけですね。南極は乾燥しているので、汗は直ぐに乾くのですが、調査隊の野外活動はそれなりに重労働なので、どんどん汗をかきます。
 南極において暖かさを後押しするのが、日射の強さです。小学生の頃、先生が「南極や北極では太陽の高度が低いから日差しがよわいんだよ」といった類のことを言っていた記憶があるのですが、実は夏の南極の全天日射量は日本の約3倍あります。南極は空気が澄んでいて、空中の水蒸気量も少ないので、太陽光線が大気中で減衰されにくいのです。また地面が雪で覆われている場所では地面からの照り返しも強力です。サングラスは必須で、つけないと雪目になります。私は南極に行くまでリップクリームというものを使ったことがなかったのですが、つけずに野外で1日作業して、唇が火傷し水疱が出来てからは忘れずにつけるようにしました。
 

写真6.日焼け対策ばっちりな謎の女性…、ではなく田邊隊員。
 
 この日差しのおかげで、テントの中はかなり暖かく快適なのですが、暖かすぎて逆に夜、暑さで寝苦しくなって起きることもしばしばありました。日の沈まない南極の夏は、一日中明るいため、テントで寝るためにはアイマスクが必須になります。経験者に教えてもらった目を直接圧迫しない凸型のアイマスクは非常に便利でした。
 日差しと同様に南極生活で脅威なのが乾燥です。肌からだんだん潤いが失われていきます。前述の唇の火傷は、傷口が乾燥してなかなか治らずに閉口しました。しかし、これは医療隊員の方に保湿能力が高いリップクリームをもらってつけていたら直ぐに治りました。
 はっきり言うと、南極の生活は滅茶苦茶お肌に悪いです。日射、寒さ、乾燥と肌に悪い条件が整いすぎています。南極に行くことになったら、準備期間のうちに何度も言われますが、乾燥対策と日射対策は万全にしておく必要があります。ちなみに南極の野外調査を行うチームは、高い発電能力を持ち、お湯をガンガン作れるドーム隊以外はお風呂と縁がありません。ずっと野外にいるとずっとお風呂もシャワーもなしです。見るもの全てが目新しい野外生活は楽しく、南極滞在中ずっと野外にいてもいいくらいなのですが、どんどん乾燥していく肌を感じると、昭和基地に戻りたくなりますね。
 最後に少し、ブリザードに関して触れておきます。と言っても私が南極にいた3か月半の間、幸いにもブリザードに襲われることはありませんでした。ただ時折、ブリザードもどきと言えるような、暴風を伴った低気圧が襲来してすべての作業を中断させられました。南極の野外生活においては数少ない骨休みの時になるのですが、トラブルも呼んできます。下の写真はブリザードもどきの際に崩壊した作業用テントです。時刻は深夜2時ぐらいでしょうか。激しい風の音で目が覚め、外を見てみると崩壊するテントが目に入りました。大型のドームテントは広く、作業用スペースとしては快適なのですが、残念ながら風に弱く、かなり補強したのですが、駄目でした。その為、翌日は崩壊したテントの撤収とテント内の調査機材の片付けに追われることになりました。南極の自然の厳しさを思わせる出来事でした。
 

写真7.暴風で崩壊していくテント。風が収まるまで、なすすべがない。
 

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