熱帯東南アジアにおける土地利用変化と植物の生物多様性減少への人間活動の影響

公開日 2021年09月28日

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 中国、ドイツ、カナダと日本(島根大学)の共同研究として行われた研究成果が、米国科学アカデミー紀要(PNAS)から2021年9月27日にオンライン出版されました(10月5日号)。本研究では古生態学的な解析により、約2,000年前の中国南部や東南アジアにおける稲作農業の拡大が、熱帯・亜熱帯林の広範な森林破壊と生物多様性の変化を引き起こしたことが示されました。約15万個の花粉同定情報と233の花粉群集の花粉データセットを作成して植生の生物多様性の過去の変化を調べるとともに、低地から山間部までの14の花粉群集を用いて森林減少の歴史を検証した結果、約2,000年前からの集約的な稲作農業の台頭は大規模な森林破壊をもたらしただけでなく、植生組成の顕著な変化と樹木植生の多様性の減少をもたらしたことが明らかになりました。特に、第三紀遺存樹種である淡水湿地の針葉樹のスイショウ(水松、Glyptostrobus pensilis)は、稲作と人間の攪乱によって自然の生息地を失い固有種を絶滅させています。先史時代の土地利用の変化が、今日の景観や種の構成に大きく影響しています。また、これらの人間活動による土地利用の変化によって中国南部の珠江やベトナム北部の紅河では、運搬土砂量が過去2,000年間に急増しています。
 エスチュアリー研究センターの齋藤文紀教授は、ベトナム北部の紅河デルタ域の花粉データや河川の運搬土砂量に関するデータを、カナダのZhen Li博士と共に提供しています。

<発表雑誌>

論文タイトル:Anthropogenic impacts on late Holocene landcover change and floristic biodiversity loss in tropical southeastern Asia
https://doi.org/10.1073/pnas.2022210118
著者:Zhuo Zheng, Ting Ma, Patrick Roberts, Zhen Li, Yuanfu Yue, Huanhuan Peng, Kangyou Huang, Qiuchi Wan, Yaze Zhang, Xiao Zhang, Yanwei Zheng, Yoshiki Saito
雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻(号)、論文番号:118 (40), e2022210118
出版年月日:2021年10月5日

 

 

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