2016/09/16 第119回 - 園田 武 博士

 第119回の懇談会は、園田 武博士(東京農業大学 生物産業学部助教 / 汽水域研究センター協力研究員)の話題提供で行うことになりました。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。


第119回汽水域懇談会
題目 : 網走湾の環境質とベントス群集の動態
      ~網走湾とその流入河川流域との生態的連環の解明にむけて~
話題提供者 : 園田 武 博士(東京農業大学生物産業学部助教 / 汽水域研究センター協力研究員)
日時 : 2016年9月23日(金)17:00~18:00
場所 : 島根大学汽水域研究センター2階セミナー室(201号室)


【発表の概要】
 網 走はサケ・マス,ホタテ漁業や河川流域での農畜産業が盛んであり,良好な生態系サービスを維持していくためにも,流域と 沿岸域の結びつきについて改めて理解を深めることが求められている.本研究は網走の流域・沿岸域の生態的連環をあきらかにする総合的研究の一環として,網 走湾の水質・底質環境とベントス群集に着目し,その特徴を明らかにすることを目的としている.2013年4月から2015年10月までの3年間,網走湾内10地点で水質測定と採水採泥調査を実施した.採水サンプルはCOD,TN,TPを分析した.採泥サンプルは粒度組成,COD,CNS分析とマクロベントスの分類計数と湿重量を測定した.それらのデータから網走湾の水質底質環境とベントス群集の季節・年変化を検討した.その結果,水質は概ね環境基準値内で推移したが,他水域との比較ではTNがやや高い傾向にあった.海底は細砂・極細砂からなる砂質底で,底質CODは0.4~1.6 mg/gだった.マクロベントスは65種 の生息を確認した.優占種は甲殻類ソコエ ビ類,棘皮動物ハスノハカシパン,多毛類カナブツイソメなどで,海底に沈降した有機物を摂餌するタイプが主で,北海道沿岸のホッキガイ・バカガイ漁場と共 通する群集構造が維持されていた.今後は,地形地質等も考慮したより詳細な水質底質分析による陸域-海域間の物質移動と,同位体分析による生息生物の食物 連鎖・利用有機物起源の解明を進めることが重要な課題である.

掲示用ポスター(ズームしてご覧ください)