2017/02/10 第122回 - 石賀 裕明 博士
第122回の懇談会は、石賀 裕明 博士(島根大学 総合理工学研究科)の話題提供で行うことになりました。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。
第122回汽水域懇談会
題目 : 島根県宍道湖の水環境の現況,沈水植物とSSのMn濃度に注目して
話題提供者 : 石賀 裕明 博士(島根大学 総合理工学研究科)
日時 : 2017年2月10日(金)17:00~18:00
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 汽水域研究センター2階セミナー室(201号室)
【発表の概要】
島根県東部の宍道湖において2009年から沈水植物のパッチ状群落が湖の南岸に沿って発生しているのが観察されている.2010年および2011年はさらにその分布域が拡大し,2012年では北岸まで広く分布するようになった.これらは,このような変化について,これまでプランクトンの優勢する濁った湖水環境から,澄んだ湖水環境へのレジームシフトが生じていると考えられている(國井,2016). 地球化学分析はさまざまな元素を蛍光X線分析装置により分析する.特に堆積物や生体に含まれる微量元素は水環境の変化に伴って,その含有率が変化するので,環境評価には有用である.2011年からオオササエビモを採取して生体の元素分析を行った.乾燥試料において重金属では亜鉛(Zn=100 ppm前後)やマンガン(MnO=数%)に選択的な濃縮の傾向が認められる.マンガンについて高い含有率を持つのは,還元環境で溶融したマンガンが,鉄のようには硫化物として沈殿しないので,湖水のマンガン含有量が高くなるためであろう.リン(P2O5)は1~3 wt%と高い値を示す.イオウ(TS)については1 wt%前後である.オオササエビモについて葉と茎について比較すると,亜鉛,マンガンは葉の方が2倍程度の含有率を持つものもある.銅,ニッケルについても葉の方が高くなる. 懸濁物(ss)についてはフィルターに捕集して元素分析を行った.2011年から継続して月ごとに採取分析した.マンガンは4月までは0.1 wt%前後であるが,5月から8月にかけて0.3 wt%以上に増加する.リンは7月,8月で0.5wt%以上と高くなるものがある.湖岸(南岸)における水質測定では6月から8月にかけて0.1 mg/L以上のマンガンが検出された地点がある.宍道湖のコアでは,これらの微量元素が2000年頃より高くなっており,環境が大きく変化しているといえる.
掲示用ポスター(ズームしてご覧ください)