2017/05/18 第124回 - 牧野 育代 博士
第124回の懇談会は牧野 育代 博士(東北大学 助教)の話題提供で行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。
第124回汽水域懇談会
題目 : アオコ化する野生型Microcystisのメタボローム解析
話題提供者 : 牧野 育代 博士(東北大学 助教)
日時 : 2017年6月15日(木)17:00~18:00
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 エスチュアリー研究センター2階セミナー室(201号室)
【発表の概要】
夏を迎えると、水辺で水面に漂う緑色の帯状の塊をよく見かけるようになります。その緑色の帯状の塊は大きくなったり小さくなったりと、その場の環境条件によって姿を変えていきます。もし大きくなった場合には“アオコ”と呼ばれる姿・現象が作り出され、しばしば夏場の水質障害の原因物質として指摘されています。アオコを構成する特定のシアノバクテリアのうち最もよく知られているのはMicrocystis(ミクロキスティス)です。Microcystisは肝機能にアタックする毒素microcystin(ミクロキスチン)を割と高い濃度で生合成していることでも有名で、衛生面からよく研究されてきました。アオコを顕微鏡で観察するとMicrocystisが大小様々に群体化し、厚いバイオフィルムに覆われて緩く繋がっている様子を捉えることができます。アオコは夏の間その繋がりを維持あるいは拡大することで湖を覆うほどの大きさになることもあります。
そもそもMicrocystisは鉛直移動するシアノバクテリアです。しかし、アオコ化が進むと水面に浮いたままになります。Microcystisが成長するには水中の窒素、リンなどの栄養塩が必要です。そのことを踏まえると、水面に浮いたままの状態は、一見、生命の維持という生き物にとっての最大の目的に反した結果であるように思えます。アオコ化はMicrocystisにとって何らかの利益をもたらしているのでしょうか。そして、microcystinの生合成に影響はあるのでしょうか。このような疑問を解くために、野生型Microcystisを対象にしたメタボローム(代謝産物)解析を行いました。そして、その結果を基にすると生き抜くための戦略としてのアオコ化というシナリオが見えてきました。セミナーでは、これまでにわかってきた野生型Microcystisの代謝経路にかかわる特徴、microcystin合成遺伝子の発現、そして、アオコ化戦略についてお話ししたいと思います。
もっと詳しく(掲示用ポスター)