中国,珠江河口域(エスチュアリー)における1955年から2013年の人間活動の影響が明らかに
公開日 2016年11月25日
齋藤 文紀(島根大学汽水域研究センター・産業技術総合研究所)
発表概要
中国で3番目に大きな河川である珠江(Pearl River)は、河口に広大なデルタ(三角州)を形成し、広州などの大都市を配している。珠江は、大きく3つのエスチュアリーを河口部に持ち、デルタ南部に位置するのが黄茅海と磨刀門、そして東側に位置する最も大きなエスチュアリーが伶仃洋 (Lingding Bay)である。本研究では、これまでに出版された海図と新たな海域調査をもとに、伶仃洋の1955年から2013年の海岸線と海底地形変化を解析した。その結果、エスチュアリーの水域の面積は、1955年から2010年の間に1010km2から833km2に、潮汐低地の面積も215km2から159km2に、またエスチュアリーの容量も、44.4億m3から38.3億m3に減少した。これらの変化を時系列で見ると1955年から1980年までは大きな変化はなく、エスチュアリーの平均水深も堆積などによって4.4mから4.2mに減少していたが、1980年から2000年には、干潟の埋め立てやダム建設による河川からの運搬土砂量の減少によって、平均水深が4.2mから4.5mに増加している。更に2000年以降は、航路の開削や土砂採取などの浚渫によって、2010年には4.6mにまで深くなってきている。また、10m以深の面積は1980年までは減少していたが、1980年の41.3km2から、2000年には58.8km2、更に2010年には86.2km2と急速に増大していることが明らかになった。また2012年と2013年の調査によって、更に浚渫が進行していることが確認された。
<発表雑誌>
雑誌名,巻,ページ等:Scientific Reports, 6, 37742; doi: 10.1038/srep37742
掲載日:2016年11月25日
論文タイトル:Impactof human activities on subaqueous topographic change in Lingding Bay of the Pearl River estuary, China, during 1955–2013
著者:Z.Y. Wu, Yoshiki Saito, D.N. Zhao, J.Q. Zhou, Z.Y. Cao, S.J. Li, J.H. Shang and Y.Y. Liang
第1図:珠江デルタ,珠江の流域と調査解析海域の伶仃洋
第2図:海図から読み取った地形変化.
(上)1955年,1964年,1980年,2000年,2010年の伶仃洋の海底地形
(下)各年代間の水深変化速度(cm/y)
第3図:伶仃洋の水域面積と容量の変化
第4図:各水深ごとの面積の変化