16th East Eurasia International Workshop参加報告書(09/16-21)
公開日 2019年09月26日
(文責・エスチュアリー研究センター 香月)
2019年9月16日から21日にかけて、16th East Eurasia International Workshop (EEIW)に参加する為、モンゴルを訪問した。EEIWは東ユーラシアの環境変遷や自然災害等に関して、最新の研究成果を報告し、議論をするための学会であり、同時に各国の研究者間の交流を深め、国際共同研究を促進させることを大きな目的としている。今年度は開催国であるモンゴルのほかに、日本・中国・韓国・台湾・ロシア・ドイツから60名以上の研究者が参加した。
我々(私・香月と瀬戸准教授)が開催地である国立モンゴル大学があるウランバートルに到着したのは学会前日16日の夕方5時過ぎである。空港からウランバートル中心地にある国立モンゴル大学前のホテルまでは距離にして10 kmほどであるが、ウランバートルの交通渋滞は聞きしに勝る凄さで,我々がウランバートル中心地にたどり着いたのは7時半を回ったあたりであった。地下鉄等の交通手段を導入して欲しいと切に願う。
写真1.ウランバートルの交通事情。市街地に車で向かうには覚悟が必要。
EEIWは研究発表と巡検の2段構成であり、通常は研究発表を1日半から2日かけて行うことが多いが、今回は広大なモンゴルで巡検を行うためか、研究発表は1日で行われた。朝から晩まで研究成果発表を聞き、無論自分も研究成果の発表を行った。国際共同研究に活かすためにお互いの興味の共通点を考えながら聞くのがほかの国際学会参加時との違いか。学会終了後は各国の研究者の代表者たちが集まって次回の開催地や開催日程に関して打ち合わせを行った。来年の開催地・ホストを正式に確定させ、開催日程を詰め、参加者たちがなるべく問題なく参加できるように調整をした。
写真2.開会の挨拶を行う国立モンゴル大学のOyunchimeg Tsさん。この1日で24の口頭発表、28のポスター発表が行われた。
さて巡検である。今回は3日かけて1340 kmをバスで移動し、モンゴル中西部の地形や地質を見て回った。朝6~7時に朝食をとり、出発し何か所か巡り、18時過ぎに目的地に到着し、モンゴル伝統のゲル(遊牧民テント)に泊まる。移動中バスから見える景色の9割5分は代わり映えのない似たような景色である。広大な草原、はるかにみえる古い山々、時折見える遊牧民のゲルと馬・牛・羊・ヤクの群れ、朝から晩まで、どこまで行ってもこの景色。しかし実際のところ、この景色だけでも最高の巡検である。カメラを通じては分からない雄大な景色、普段の生活からかけ離れた地球の知らない1面が感じられる。一度は訪れることをお勧めしたい。
経由地の一つであるカラコルムはかつて人類史上最大の帝国の首都がおかれた地である。今現在そのことを現在に伝えるのは、(日蒙協力のもと作られた)小さな博物館に収められた遺物と復元されたいくつかの建造物やモニュメントだけで、かつての大帝国の栄光は全くうかがえない。兵どもが夢の跡という言葉があるが、夢の跡すら感じられない。しかし、かつてない確かにこの大草原に多民族の集う首都があったというのが面白い。
写真3.モンゴルの大地。どこまで行っても変わらない雄大な景色。
写真4.高度2200m以上。Khorgo火山の火口に立つ瀬戸准教授。
今回EEIWに参加する前に、かつてモンゴルでの調査を何度か行った知人に「食事は朝から晩までマトン。三食全てに独特の臭みのあるマトンがでる。」と脅された。が、実際にところは一度もマトンにはお目にかからなかった。肉類は基本的に、牛・豚・ヤクあたりで、もしかしたら肉料理にラムが含まれていたかも知れないけど臭みはまったくなかった。モンゴルの食事事情も変わりつつあるあるのかもしれない。料理は基本的にとてもおいしいが、伝統的な肉を包み込んだ餃子には日本人のサガとしてラー油を入れた酢醤油が欲しいところ。モンゴルでの食事の問題点は量である。とにかく出される量が尋常ではない。出された食事は全部食べろの大和魂ですべて平らげたが、おそらくこの学会中に2 kgは太ったのではないか。
写真5.肉餃子。写真ではあまり大きく見えないが、実際は1~2個でお腹いっぱいになる驚異のサイズ。
ところでモンゴルは一日の気温差がかなり激しくこの時期は、昼はシャツ1枚で十分なのに、朝夕は氷点下付近まで冷え込む。宿泊にもちいたゲルは3~5人用であり、中央に薪ストーブが設置してあり、周辺部にベッドが置いてある。薪ストーブを炊けばゲルの中はサウナのように熱くなるが、火が消えるとあっという間に寒くなる。しかし、ベッドの上には下から順に敷布団、掛布団、毛布があり、布団のなかは十分に暖かく、Tシャツ1枚で寝ても何の問題もない・・・はずである。巡検初日の夜、私は深夜に一度目が覚めたのだが、同室の学生2名がなぜかダウンを着て、掛布団の上に寝ていた。翌朝「寒くて寝れませんでした。」といったので、敷布団と掛布団の間で寝るように指摘したが、2日目違うゲルに宿泊になった彼らがよく眠れたように祈るのみである。日本では毛布の上に掛布団を置く家庭が多いので、毛布しかないと思ったのであろうか?ちなみにもう一人いた同室の学生は掛布団にくるまれてシャツ1枚で寝ていた。
それはさておき、巡検の目的の一つは国際交流である。今回は巡検中、中韓の研究者らと今後の共同研究に向けたメーリングリストの作成や以前より約束していたMOU締結に向けた今後のやり取りや訪問の日程に関する話し合いを行うことができ、そちらの面でも非常に有意義な巡検となった。
写真6.TerkhiinTsagaan湖湖畔にてドイツ・韓国の研究者らと。日没の光が食堂に差し込む。
最後にEEIWの開催は東ユーラシアの各国で持ち回りである。来年は中国・昆明での開催、再来年はここ日本・島根で開催予定である。この報告を最後まで読むような奇特な方は、2年後のEEIWに参加し素晴らしい研究発表を東ユーラシアに向けて行ってくれるものと固く信じている。