メコンデルタのエスチュアリー(河川下流域から河口域)の堆積作用が明らかになる

公開日 2020年02月14日

<img title="200214TOP.jpg" src="/_files/00189101/200214TOP.jpg" alt="200214TOP.jpg" />

 世界で3番目に広大なデルタ平野を有するメコンデルタにおいて、ベトナムのメコンデルタ全域の河床から採取した堆積物の粒度分布、帯磁率、有機物の地球化学的な特徴を、乾季と雨季において調査した結果、堆積物の運搬・堆積プロセスが明らかになった。ベトナムのメコンデルタでは、カンボジアに近い上流側と河口に近い下流側では堆積物の特徴が大きく異なる。上流側が粗粒な堆積物になり、有機物の含有量が少なく、帯磁率も低い値を示すのに対し、下流側は細粒で、有機物の含有が多く、帯磁率も高い値を示す。上流側と下流側の違いは主たる営力の違いに起因しており、上流側は河川営力が、下流側は潮汐営力が卓越しており、この違いが河床堆積物や地形を規制している。一方、乾季と雨季では、主たる泥の分布域や有機物の組成に違いが見られる。雨季は、河川由来の土砂が全域で卓越するのに対し、乾季は、河川からの土砂量が激減し、潮汐によって海側から供給される細粒堆積物が下流域で支配的となる。このため海域由来の有機物が増加する。メガデルタと呼ばれる大規模デルタの河道(エスチュアリー)で、このような詳細な堆積プロセスや特徴が明らかになったのは初めてである。本研究は、エスチュアリー研究センターの齋藤文紀教授と中国華東師範大学、ベトナム科学技術院ホーチミン市資源地理研究所、産業技術総合研究所との共同研究の成果です。

 

<発表雑誌>

論文タイトル: Spatial and seasonal variability in grain size, magnetic susceptibility, and organic elemental geochemistry of channel-bed sediments from the Mekong Delta, Vietnam: Implications for hydro-sedimentary dynamic processes

(ベトナム,メコンデルタの河床堆積物の粒径、帯磁率、および有機元素の地球化学の空間的および季節的変動:水理堆積学的な動的プロセスの意味)
https://doi.org/10.1016/j.margeo.2019.106089

著者:Yamei Jiang, Yoshiki Saito, Thi Kim Oanh Ta, Zhanghua Wang, Marcello Gugliotta, Van Lap Nguyen

雑誌名,巻,論文番号: Marine Geology,420, 106089
出版年月:2020年2月
出版社:Elsevier

戻る