熱帯域の潮間帯に存在する海草藻場が魚類の重要な摂餌場となっていることが水中ビデオを用いた調査により明らかに

公開日 2020年05月14日

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 インド太平洋熱帯域の潮間帯では海草藻場が普通に見られる(図1)。
 干出していない時間帯には潮間帯海草藻場に小型魚類が出現することが知られているが、それらの出現のタイミングや摂餌行動については知見がほとんどなかった。そこでフィリピン北ミンダナオ地方において、雨季と乾季に潮間帯海草藻場に水中ビデオカメラシステムを設置し、上げ潮開始時から3時間記録を行うことで、小型魚類がどのような出現パターンや摂餌行動を示すのか調べた。雨季と乾季合わせて23科59種の魚類が記録された(図2)。両季節とも、潮間帯海草藻場には録画開始30分以内(水深約30–40 cm)には記録されたすべての魚種の約50%が出現し、さらに120分後には種数は80%に達した。録画時間帯を通し、ベラ科、フエフキダイ科、フエダイ科、アイゴ科の稚魚で相対的に小さな個体(全長10 cm未満)が最も多く出現した。後3科についてはやや大型の稚魚(全長10 cm以上)も上げ潮開始後まもなく出現したが、ベラ科では大型稚魚は潮がかなり上がった段階で個体数が多くなった。漁業上重要なこれらの科の魚類は上げ潮時に活発に餌を摂っており、潮間帯海草藻場が重要な摂餌場となっていることが分かった。沿岸域の保全/管理方策立案時には、このような潮間帯のハビタットが様々な魚類が利用する重要な場所となっていることを考慮する必要がある。
 本研究は、高知大学大学院黒潮圏科学部門水族生態学研究室、Mindanao State University at Naawan、Rajamangala University of Technology Srivijaya, Trang Campusの研究者の方たちとエスチュアリー研究センターの堀之内正博准教授との共同研究の成果です。
 

<発表雑誌>

論文タイトル: Tropical intertidal seagrass beds: An overlooked foraging habitat for fishes revealed by underwater videos
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022098119301686
著者:Anabelle Dece A. Espadero, Yohei Nakamura, Wilfredo H. Uy, Prasert Tongnunui, Masahiro Horinouchi
雑誌名,巻,論文番号:Journal of Experimental Marine Biology and Ecology, 526, 151353
出版年月:2020年5月
出版社:ELSEVIER

 

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