メコンデルタの長期的な海岸侵食が明らかになる:ダム建設以前から海岸侵食は起こっていた

公開日 2020年05月18日

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 世界で3番目に広大なデルタ平野を有するメコンデルタでは、海岸侵食が大きな問題となっている。島根大学エスチュアリー研究センターの齋藤文紀教授を中心とする日本、ベトナム、英国、フランスの国際共同研究チームが、メコンデルタにおいて行った表層地形・地質調査の結果、過去約2500年間にわたるメコンデルタ全域の海岸線の変化が明らかとなった。メコンデルタの海岸線の詳細な変化については、齋藤教授らによってデルタ中央部については2012年に、また過去数十年間のデルタ全域については2017年に国際学術誌から報告されている。今回、デルタ西側についてボーリング調査と表層地形調査、および関連する詳細な年代測定を行い、過去約2500年間のメコンデルタ全域の長期的な海岸線の変化が明らかとなった。メコンデルタでは、ダム建設や河床砂礫の採取による海岸侵食が問題となっているが、今回の調査によって、このような人間活動以前から海岸侵食が起こっていることが明らかとなった。1900年以降では水路の建設などの人間活動が行われており、また土砂の生産量や運搬量も大きく変化した可能性がある。現在の海岸侵食の理解には、より長期的な原因解明が必要であることを示している。
 本論文は、Springer-NatureのScientific Reportsから2020年5月15日に出版された。

<発表雑誌>
論文タイトル: Long-term sediment decline causes ongoing shrinkage of the Mekong megadelta, Vietnam
(ベトナム,メコンメガデルタにおける長期的な堆積物供給の減少が引き起こすデルタの海岸侵食)
https://www.nature.com/articles/s41598-020-64630-z
著者:Toru Tamura, Van Lap Nguyen, Thi Kim Oanh Ta, Mark D. Bateman, Marcello Gugliotta, Edward J. Anthony, Rei Nakashima, Yoshiki Saito.
雑誌名,巻,論文番号: Scientific Reports, 10, 8085
出版年月:2020年5月
出版社:Springer-Nature

関連論文
Li, X., Liu, J.P., Saito, Y., Nguyen, V.L. (2017) Recent evolution of the Mekong Delta and the impacts of dams. Earth-Science Reviews, 175, 1–17.
https://doi.org/10.1016/j.earscirev.2017.10.008
Tamura, T., Saito, Y., Bateman, M.D., Nguyen, V.L., Ta, T.K.O., Matsumoto, D. (2012) Luminescence dating of beach ridges for characterizing multi-decadal to centennial deltaic shoreline changes during Late Holocene, Mekong River delta. Marine Geology, 326–328, 140–153.
http://dx.doi.org/10.1016/j.margeo.2012.08.004
Tamura, T., Saito, Y., Nguyen, V.L., Ta, T.K.O., Bateman, M.D., Matsumoto, D., Yamashita, S. (2012) Origin and evolution of inter-distributary delta plains, insights from Mekong River delta. Geology, 40, 303–306.
http://dx.doi.org/10.1130/G32717.1

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