潮汐が卓越するデルタ(三角州)における地形と堆積物の一般的特徴を解明-齋藤文紀教授、マルチェロ・ググリオッタ外国人研究員-

2019年2月27日

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 ―メガデルタの維持管理、堆積モデル、水理モデルに貢献する成果―

 齋藤文紀 エスチュアリー研究センター教授、マルチェロ・ググリオッタ 同センター外国人研究員は、潮汐が卓越する世界の5大デルタ(三角州:ガンジス・ブラマプトラ河、イラワジ河、メコン河、長江、フライ河)の河川下流域から河口域の地形の特徴をまとめ、従来知られていなかった区域を識別し、新しいモデルを提示しました。これにより、下流域での河床砂の利活用や、維持管理と保全、デルタの堆積モデルや水理モデルに大きく貢献することが期待されます。
 デルタには、世界で5億人以上が居住し、農業、水産業、工業などの生産の場としても重要です。特にアジアには、大河川がつくるメガデルタが数多く分布し、高い人口密度とも関連し、生活と生産の重要な場となっています。しかし、流域におけるダム建設などの水利用の変化やデルタ内の地下水の組み上げ過多による地盤沈下などにより、デルタは危機的な状況にあることが報告されています。デルタの形成には、河川・波浪・潮汐の3つの営力が作用していることがわかっています。特に大河川のデルタでは、潮汐が大きく影響していることが知られています。これらの3つが作用するデルタのうち、河川と波浪が卓越するデルタについては近年多くの研究が行われ、研究が進展してきているのと比べて、潮汐が卓越するデルタは複雑で未解明な点が数多く残されていました。本研究では、潮汐が卓越するデルタの中でも、世界的に代表的、かつ巨大なガンジス・ブラマプトラ河、イラワジ河、メコン河、長江、フライ河の5大メガデルタを対象に、河川下流域から河口域の流路の特徴、堆積物の特徴をとりまとめました。その結果、河川下流域から河口域は、河川の影響が卓越する上流部と潮汐が卓越する下流部の2つの区域に明瞭に分かれ、河床の堆積物とも密接に関連していることを世界で初めて明らかにしました。潮汐が卓越する下流部は本研究によって初めて識別された区域になります。
 本研究の成果は、潮汐卓越型デルタの水理モデルによる研究や、形成機構や地形動態、堆積学的な研究の観点、また河川下流域から河口域の土砂採取などの利活用と維持管理・保全の研究、更に潮汐が河川に及ぼしている区域の識別や評価に貢献することが期待されます。

本研究は、文部科学省 科学研究費補助金 基盤(B)一般17H02980、およびJSPS特別研究員奨励費17F17330の助成を受けたものです。
本研究成果は、2019年2月20日に、国際学術誌「Earth-Science Reviews」に掲載されました。

<発表雑誌>
雑誌名,巻,ページ:Earth-Science Reviews, Elsevier,191巻,93–113ページ
doi:10.1016/j.earscirev.2019.02.002
著者:Marcello Gugliotta & Yoshiki Saito
Online 掲載日:2019年2月20日
出版:2019年4月
Gugliotta, M, Saito, Y., 2019. Matching trends in channel width, sinuosity, and depth along the fluvial to marine transition zone of tide-dominated river deltas: the need for a revision of depositional and hydraulic models. Earth-Science Reviews, vol. 191, pp. 93–113.  Elsevier.

<発表概要>
従
従来のモデル(A)と新しく提示されたモデル(B)

地形変換点は、河口から約100〜200km上流に位置します。
河川の川幅、水深、屈曲度(蛇行度、弯曲度)、および河床の堆積物は、上流部と下流部で大きな違いがあることが明らかになりました。下流部は、より直線的な河川で、川幅は下流に向かい増大し、河床は浅くなる特徴があり、堆積物は主に浮遊堆積物の砂と泥からなっています。


新たに提案された河川の下流域から河口の河床縦断面の模式と堆積様式


調査対象とした5大河川

<本研究の背景>
 デルタ(三角州)は、河川が河口域に形成する地形で、アジアには大河川が多数存在することから数多くの大規模なデルタを見ることができます。これらの巨大なデルタは、メガデルタと呼ばれています。これらのデルタでは、河川の作用、沿岸域における波浪と潮汐、この3つがデルタの形や形成に大きな影響を与えていることがわかっています。3つの端成分を代表して、それぞれが強く影響を及ぼしているデルタを、河川卓越型、波浪卓越型、潮汐卓越型と区分しています。このうち河川の作用と波浪が卓越するデルタについては近年の研究によって機能や区分が整理されてきており、数値解析が進んでいます。一方、多くの大河川が区分される潮汐卓越型デルタについては、その機能が未だ明瞭に示されていなく、数値モデル化の研究も他の2つに比べて遅れています。齋藤教授らは、ベトナムのメコンデルタを対象に2015年からメコンデルタの河道の調査を行い、デルタの分流路の形状や堆積物が大きく2つの区域に分かれることを世界で初めて見出しました。これらの成果は、Guguliotta et al., 2017, 2019で公表されています。本研究は、この研究を基に世界の大河川を対象に研究を発展させ、見出された成果です。

Gugliotta, M., Saito, Y., Nguyen, V.L., Ta, T.K.O., Tamura, T., 2019. Sediment distribution and depositional processes along the fluvial to marine transition zone of the Mekong River delta, Vietnam. Sedimentology, vol. 66, pp. 146–164 (2019.01)
Gugliotta, M., Saito, Y., Nguyen, V.L., Ta, T.K.O., Nakashima, R., Tamura, T., Uehara, K., Katsuki, K., Yamamoto, S., 2017. Process regime, salinity, morphological, and sedimentary trends along the fluvial to marine transition zone of the mixed-energy Mekong River delta, Vietnam. Continental Shelf Research, vol. 147, pp. 7–26. (2017.09)

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