第141回汽水域懇談会 -矢野 真一郎 博士-【04/11開催】
公開日 2019年03月29日
第141回の懇談会は矢野 真一郎 博士(九州大学大学院 教授)の話題提供で行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。
第141回汽水域懇談会
題目 : 水俣湾の微量残留水銀動態について
話題提供者 : 矢野 真一郎 博士(九州大学 大学院工学研究院 環境社会部門 教授)
日時 : 2019年04月11日(木) 17:00–18:00
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 エスチュアリー研究センター 2階セミナー室(201号室)
【発表の概要】
1956年の水俣病の公式確認から60年以上の年月が過ぎた。1977年より熊本県が実施した環境修復事業により、原因物質である水銀が吸着した底泥は浚渫され、海岸に埋め立て封入された。このときの浚渫基準は総水銀濃度25ppm(dry)であったが、現在の水俣湾内では最大で10ppmの残留水銀が観測されている。この濃度は、環境基準以下であり危険性はないといわれているが、自然界のバックグラウンド濃度0.1ppmオーダーと比べれば高い。また近年、世界的には海洋生態系における生物濃縮によりマグロなどの大型魚類や鯨などの大型ほ乳類に比較的高い濃度の水銀が含有されており、その人的影響(特に妊婦のお腹の中の胎児に対して)が懸念されている。
我々の研究グループ(九州大学(工学)、環境省国立水俣病総合研究センター、長崎大学(工学・水産))では、2006年より海水中の水銀濃度のモニタリングを継続的に実施している。その中では、海水中無機態水銀のメチル化(In-situ methylation)の発生が見られており、世界的にも注目されている。また、水俣湾から外海となる八代海へ微量な水銀を含んだ底泥が拡がっていることも底泥のコアサンプリングデータから確認されている。将来にわたる水銀リスクの管理、特に安全性を保証することが求められており、将来にわたる水銀動態を予測する数値モデルの開発にも取り組んでいる。今回、それら一連の研究でこれまでに明らかになっている内容を紹介したい。