第142回汽水域懇談会 -板木 拓也 博士/川又 基人 氏-【06/05開催】

公開日 2019年05月24日

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 第142回の懇談会は板木 拓也 博士(産業技術総合研究所 地質調査総合センター・主任研究員)と川又 基人 氏(総合研究大学院大学・極域科学専攻 D3)の話題提供で行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。 
掲示用ポスター


第142回汽水域懇談会

題目 : 東南極宗谷海岸における地形調査と新たに得られた年代試料に基づく氷床後退過程
話題提供者 : 川又 基人 氏(総合研究大学院大学・極域科学専攻 D3)
日時 : 2019年06月05日(水) 16:30–17:00
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 エスチュアリー研究センター 2階セミナー室(201号室)

【発表の概要】
 南極氷床は、海水準変動や海洋循環を通して全球的な気候変動に密接に関連しており、その変動メカニズムを把握することは今後の気候変動予測にとって重要である。とくに南極氷床の末端、つまり氷床の消耗域である沿岸地域における、現地の地形地質データを基にした詳細な氷床後退過程は、氷床と海洋との相互作用の理解や氷河・氷床モデルの検証・精度向上に寄与する貴重な基礎データとなる。そこで本研究では、東南極宗谷海岸において第四紀後期の東南極氷床の時空間的な後退過程の解明を目的とし、第57次(2015年12月〜2016 年2月)・第59次(2017年11月〜2018年2月)南極地域観測隊において、地形調査、表面露出年代測定用試料のサンプリングおよび湖沼における柱状堆積物のサンプリング(合計26本)を実施した。その際、新型の掘削機材(可搬型パーカッションピストンコアラー)を用いることにより、これまでの人力による押し込み式コアラーでは採取できていなかった4 mを超える長尺の柱状堆積物の採取に成功した。地形調査(氷河擦痕、岩石風化状態)の結果、宗谷海岸スカルブスネスを覆っていた氷床は、現在の氷床縁から遠い地域から流動方向を変えつつ後退していったと考えられた(図2)。この結果は、新たに得られた表面露出年代値とも整合的で、現在の氷床縁に近い地点で約9 kaには氷床から露出していた。今回の発表では、とくに地形調査結果から考えられる氷床後退過程および、第59次南極地域観測隊で得られた湖沼堆積物について報告し、既存研究における湖沼堆積物を用いた湖沼成立年代に関する問題点について言及する。 掲示用ポスター


第142回汽水域懇談会

題目 : 沖縄本島周辺海域の堆積物:台風によって流出する赤土とその行方
話題提供者 : 板木 拓也 博士(産業技術総合研究所 地質調査総合センター・主任研究員
日時 : 2019年06月05日(水) 17:00–18:00
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 エスチュアリー研究センター 2階セミナー室(201号室)

【発表の概要】
 南西諸島の島々では、昭和20年代以降のパイン畑の拡大や大規模な土地開発などによって大量の赤土が海に流れ出し、サンゴ礁生態系に影響を及ぼすなど深刻な環境問題となっている。1995年には沖縄県の赤土防止条例が制定され、これを受けて赤土の流出量が継続的にモニターされている。このような赤土流出問題は、一般に人間活動によって引き起こされた現象と捉えられているが、それ以外にも降水量の増減などが流出量と密接に関係しており、例えば台風や長雨による大規模な洪水が突発的な赤土流出量の上昇を引き起こす原因となっている。現在進行しつつある地球温暖化によって沖縄地域に襲来する台風の勢力拡大(スーパー台風)が懸念されており、それに伴う降水量の増加が赤土流出に与える影響、さらに赤土流出が海洋生物に与える影響を評価することは、地球温暖化を見据えた更なる予防策を検討する際にも重要な課題である。
 これまで赤土流出に関する調査・研究は、工学や環境学の見地から行われたものが大部分であり、また調査地域も陸域〜サンゴ礁付近までの沿岸域に限られていた。最近になって、産業技術総合研究所(産総研)は、沖縄本島周辺海域において実施された海洋地質調査の結果をもとに、沿岸域から流出してきた赤土起源の堆積物が沖合にまで広く分布していることを明らかにし、沖合域で採取されたコアの解析からは過去に赤土流出量が増加していた時期があった可能性を指摘した。 掲示用ポスター


 

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