開学70周年記念事業 第146回汽水域懇談会 -小室 隆 博士-【07/16開催】
公開日 2019年07月02日
第146回の懇談会は小室 隆 博士(海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域海洋環境情報研究専任研究員)の話題提供で行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。
開学70周年記念事業 第146回汽水域懇談会
題目 : 環境DNAを用いた環境評価・復元の可能性
話題提供者 : 小室 隆 博士(海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域海洋環境情報研究専任研究員)
日時 : 2019年 7月16日(火) 13:15–14:15
場所 : 島根大学 研究・学術情報機構 エスチュアリー研究センター 2階セミナー室(201号室)
【発表の概要】
「環境DNA(Environmental DNA)」は近年注目されるようになった新しい環境測定方法である。環境DNAは生物の遺骸、皮膚、粘液などが環境中(水中、大気、土壌中など)に放出された生物由来のDNAである。この環境DNAを収集・解析することによって、その場の生物相が、直接生物を採取しなくても把握することが可能である。これまで、河川や湖沼などの水域において生物相調査をする場合は、網による捕獲や、潜水目視調査が行われており、非常に労力がかかっていたが、環境DNAを用いることで短期間での広域調査が可能となり、流域全体での評価がしやすくなっている。環境DNAは解析を行う際に2つの手法を取る。一つはある特定の種、例えば魚類のアユならばアユの塩基配列から作成したプライマーを用いることで対象水域でのアユの在・不在が分かる。もう一方は、例えば魚類では、複数の魚種を同時検出が可能なユニバーサルプライマーを用いた方法である。
環境DNA研究は水域での利用が多いが、堆積物に応用した研究例として現在宍道湖にておいて取り組んでいる研究の進捗状況を報告させていただく。宍道湖では現在、大型の維管束植物が優占し、湖面を覆い、シジミ漁や景観悪化、悪臭などの問題を引き起こしているが、高度経済成長期以前は現在とは異なっていた。これまで、過去の生物相や植物相を解明するためには、柱状堆積物を採取し、その中から植物片や生物遺骸を分取する必要があり、労力がかかっていた。そこで本研究では、環境DNAを用いて堆積物中に存在する水草(主に車軸藻類)のDNA採取し、過去から現在に至る植物相の解明を試みている。
今回は、環境DNAについての諸外国での研究例や発表者が現在行っている宍道湖堆積物を用いた研究の進捗状況を報告させていただく。