エスチュアリー研究センターの仲村康秀特任助教が、日本プランクトン学会の2022年論文賞を受賞しました
公開日 2022年03月29日
2022年3月20日に、エスチュアリー研究センターの仲村康秀特任助教が、日本プランクトン学会の2022年論文賞を受賞しました。受賞対象となった論文は「Nakamura, Y., Tuji, A., Makino, W., Matsuzaki, S.S., Nagata, N., Nakagawa, M., Takamura, N. (2020) Feeding ecology of a mysid species, Neomysis awatschensis ― combining approach with microscopy, stable isotope analysis and DNA metabarcoding. Plankton and Benthos Research 15: 44–54. (リンク:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pbr/15/1/15_P150107/_pdf/-char/ja)」であり、国立科学博物館の辻彰洋博士と長太伸章博士、国立環境研究所の松崎慎一郎博士と高村典子博士、中川惠氏、および東北大学の牧野渡博士との共同研究です。
日本で2番目に大きい湖である茨城県の霞ヶ浦では、イサザアミ(Neomysis awatschensis)という微小な甲殻類が生息しています。このイサザアミは魚類などの餌として生態系を支えている重要な種なのですが、イサザアミの餌資源については不確定な部分が多く、様々な見解がありました。今回の論文では、イサザアミの糞粒に対する顕微鏡観察とDNAメタバーコーディング、および筋肉を対象とした安定同位体比分析により、本種の餌資源を多角的に分析しました。結果として、現在の霞ヶ浦に生息しているイサザアミの主な餌資源が植物プランクトンである事、そして1970年代以降に起こった霞ヶ浦の淡水化によりイサザアミの食性が変化した可能性を示しました。本研究では、顕微鏡観察、DNAおよび同位体など、長所・短所の異なる様々な分析方法を組み合わせて生物の食性を解明した点も評価されました。
現在、地球温暖化や海洋酸性化によって海や湖沼の環境が激変していますが、本研究のように多種多様な手法を組み合わせ、可能な限りの知恵を巡らせる事で、私達の水産・海洋資源を生み出す生態系の構造と神秘が今後さらに解明されること、またそれによって人間社会と自然環境との健全な関係が保たれることが期待されます。
賞状
霞ヶ浦に生息するイサザアミ