黄河は、いつ誕生したのか? 【エスチュアリー研究センター 研究成果】
公開日 2022年06月06日
世界有数の大河であり、世界四大文明の一つを胚胎した黄河はいつ誕生したのか。これまでの研究では5百万年前から15万年前と様々で、チベット高原の隆起から地球規模の気候変動など多くの成因が考察されてきました。中国蘭州大学のWang Xin (王鑫)教授を中心とする研究グループと島根大学は、黄河中流域の三門峡で採取したボーリングコアの解析から、中流域に分布していた湖沼が消滅し、上流域からの河川堆積物が約125万年前に堆積し始めたことを明らかにしました。これまでに報告された河岸段丘の証拠や下流域の華北平原から渤海のボーリングコアの解析結果を統合すると、黄河の中流域と下流域の連結が約125万年前頃に起こったことを示しており、中期更新世遷移期(Middle Pleistocene Transition)の開始と整合的です。中期更新世遷移期は、前期更新世の4.1万年周期の気候・海水準変動から現在の氷期と間氷期のサイクルである10万年周期に移行した時期を指します。チバニアンの始まりは、その最後の重要な時期にあたります。中期更新世遷移期は、それ以前に比べて海水準の低下が顕著で、多くの谷が形成されました。この谷の形成(下刻)が黄河の誕生と発達を導いたと考えられます。
エスチュアリー研究センターの齋藤文紀教授は、ボーリングコアと黄河の成因の解釈に大きな貢献をしています。
<発表雑誌情報>
論文タイトル:Did the modern Yellow River form at the Mid-Pleistocene transition?
著者:Xin Wang, Gang Hu, Yoshiki Saito, Guanzhong Nia, Han Hu, Ziying Yu, Jingping Chen, Mi Wang, Xiaoping Yuan, Lei Wang, Zhenbo Hu, Junsheng Nie, Baotian Pan
雑誌名:Science Bulletin
巻、ページ:67巻, in press.
出版年月日:2022年6月(オンライン)
https://doi.org/10.1016/j.scib.2022.06.003