「リザリアライダー現象」:甲殻類が単細胞動物プランクトンを子育てに利用する可能性を発見!【エスチュアリー研究センター 研究成果】

公開日 2022年11月02日

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 齋藤暢宏氏(水土舎)、加山藍子氏(埼玉県和光市在住)および仲村康秀特任助教(島根大学エスチュアリー研究センター)の共同研究チームが、甲殻類とリザリア類との共生現象(通称リザリアライダー現象)に関する新たな知見を見出しました。
 「リザリアライダー」という現象は、カニ類の幼生や端脚類などの甲殻類が、リザリア類(ファエオダリア類や放散虫類などの単細胞動物プランクトン)に付着して共生関係を築く現象で、今回の共同研究チームのメンバーが2019年に発見・報告しました(Nakamura et al. 2019, Marine Biodiversity誌)。このリザリアライダーについては発見例が非常に少なく、いつ、どこで、なぜ共生を行っているのか等の詳細については未解明な点が多い現象です。今回、小笠原諸島兄島の沖(水深8 m)で潜水調査を行ったところ、非常に貴重なリザリアライダー状態の端脚類の撮影に成功しました。撮影された写真では、リザリア類6個体が組み合わさった群体が、端脚類の雌1個体によって保持されていました。さらに、この雌個体の子供達と思われる小さな端脚類が、リザリア類各個体に付いている様子も確認されました。
 リザリアライダー現象では、甲殻類がリザリア類を浮力調整や餌を集めるための道具として利用していると言われていましたが、今回の発見により、リザリア類は子供を育てる場所(保育床)としても使われている可能性が示されました。リザリアライダー現象自体の発見例が非常に少なく、さらに親と子供が同時にくっついている状態が撮影された事は世界初であり、これは日本を取り囲む海の生態系や生物多様性を解明して持続可能に利用してゆくためにも重要な発見です。

本研究成果に関する論文は、2022年10月に日本甲殻類学会が発行するCrustacean Research誌に掲載されました。


図1。リザリア類(単細胞の動物プランクトン)。

 


図2。本研究で撮影された「リザリアライダー」状態の端脚類とリザリア類。

 

 

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