世界中の地層から、1952年頃に人の影響を示す痕跡の急増を発見!【エスチュアリー研究センター 齋藤文紀 特任教授】
公開日 2024年09月26日
エスチュアリー研究センターの齋藤文紀特任教授が参加するグループは、1952年頃に人類が地球システムを圧倒し始め、人の痕跡の急増があることを世界中の地層から見出しました。本研究は、愛媛大学沿岸環境科学研究センターの加三千宣教授を代表として、東京大学大気海洋研究所、松山大学法学部、京都大学情報学研究科との共同研究として実施され、2024年9月23日にアメリカ合衆国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: PNAS)からオンライン出版されました。
人類が地球システムに大きな影響を与え、また圧倒し始めた時代は、「人新世:Anthropocene」と称されています。2009年から国際地質学連合(IUGS)の中で人新世を正式な地質時代として採用するかどうかの検討が行われてきました。2023年10月に人新世作業部会(Anthropocene Working Group: AWG)からその申請が行われましたが、提案は2024年3月にIUGSにおいて否認されました
これらの経過については、日本第四紀学会のホームページに詳細が報告されていますので、ご参照ください(加・齋藤、2024)。人新世は正式な地質年代としては否認されましたが、人新世という用語は、地球システム科学をはじめ、社会学、経済学など様々な分野で使用されてきています。作業部会の代表者らによって現状の概要が報告されていますので、ご参照ください(Zalasiewicz et al., 2024)。
本論文は、堆積物やサンゴ、氷床コアなどの地質試料において、人類の痕跡が地球規模で1952年頃を境に急増することを初めて示した論文であり、地質年代を決定する際に重要な根拠となりえることを示した論文です。
詳細はプレスリリースをご覧ください。
参考文献
加三千宣・齋藤文紀, 2024. 年代層序単元としての人新世の科学的根拠とその否認について-人新世作業部会の提案書に基づいた解説(概略版). 第四紀通信 31 (3), 16-19.詳細版 http://quaternary.jp/news/jinshinsei/detail.pdf
Zalasiewicz, J., Thomas, J.A., Waters, C.N., Turner, S., and Head, M.J., 2024. What should the Anthropocene mean? Nature, 632, 980–984. https://doi.org/10.1038/d41586-024-02712-y
論文名:Toward defining the Anthropocene onset using a rapid increase in anthropogenic fingerprints in global geological archives.
(和訳)全球の地質記録媒体における人為痕跡の急激な増加に着目した人新世の始まりの定義に向けて _
著者名:Michinobu Kuwae, Yusuke Yokoyama, Stephen Tims, Michaela Froehlich, L. Keith Fifield, Takahiro Aze, Narumi Tsugeki, Hideyuki Doi, and Yoshiki Saito
雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
巻号と論文番号:121(41)、e2313098121
Doi: https://www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.2313098121
オンライン出版年月:2024年9月23日
正式出版:2024年10月8日 121巻41号e2313098121
愛媛大学のプレス発表のページ:
https://www.ehime-u.ac.jp/data_relese/pr_20240924_cmes/
京都大学のプレス発表のページ:
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-09-24-0
日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/137526