日本初記録の「ヤドカリ」を発見-大澤正幸 客員研究員-
公開日 2019年04月12日
日本初記録種のヤドカリを発見した論文が発表されました。本研究は、大澤正幸研究員(島根大学エスチュアリー研究センター客員研究員)と沖縄美ら海水族館の東地拓生飼育職員との共同研究で、本種「ウスイロニセホンヤドカリ」の展示が沖縄美ら海水族館で現在行われています。
発見された「ウスイロニセホンヤドカリ」 学名:Propagurus haigae
<発表概要>
日本沿岸からの初記録となる「ウスイロニセホンヤドカリ(新称) Propagurus haigae (McLaughlin, 1997)」に関する報文を出版しました。2019年2月に紹介した新種「シマツノコシオリエビ Eumunida balteipes」に関する報文に続く、沖縄美ら海水族館の東地拓生氏との共同研究の成果です。
Propagurus haigaeは、インドネシア、ニューカレドニア、オーストラリアの水深265–580 mから記録されていました。今回の報文で用いた標本は、沖縄美ら海水族館を管理運営している沖縄美ら島財団が2018年5月に実施した深海生物調査をとおして、琉球列島伊江島沖の水深620 mから採集されました。沖縄からの発見により、本種の分布の北限が大きく拡がりました。
本種は、深海性のホンヤドカリ科の種の中では比較的大型で、右鉗脚の先端から尾部の後端までの長さが100 mmほどあります。宿貝にはイソギンチャクの仲間を共生させています。ヨコヤホンヤドカリ属Propagurusは、右鉗脚の大きい「典型的」な姿をしたヤドカリに見えますが、鰓の数が多いことで、むしろ「異質」な特徴を持つグループに位置付けられます。
ウスイロニセホンヤドカリは、5月6日までの予定で沖縄美ら海水族館において生体展示されています。沖縄島に旅行などで訪れる機会がある方は、ぜひウスイロニセホンヤドカリ、シマツノコシオリエビ、そして興味深い様々な「深海動物」を実際にご覧になっていただけたら幸いです。
深海のみならず汽水から浅海にかけても、未記載種を含めて、まだまだたくさんの「ヤドカリ」が発見されることを待っています。沿岸環境の保全のためにも、私たちが眺めている沿岸にどのような生物が、どのように、どれくらい棲んでいるのか、正確に理解・把握することが大切です。
<発表雑誌>
雑誌名,巻,頁: Crustaceana. 92 (4): 477–483.
掲載日: 2019年4月1日(オンライン)
論文タイトル: First record of Propagurus haigae (McLaughlin, 1997) (Decapoda, Anomura, Paguridae) from Japan.
著者: Masayuki Osawa and Takuo Higashiji
論文要旨: https://brill.com/abstract/journals/cr/92/4/article-p477_7.xml